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株式会社田端本堂カンパニー(北海道滝川市)

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株式会社田端本堂カンパニー
(北海道滝川市)

【写真】田端さん、芝岡さん 株式会社田端本堂カンパニーは、1914年(大正3年)創業、1951年(昭和26年)設立。河川改修や病院建築、下水道工事などを行う建設会社である。
職員数は80名(2024年9月現在)。滝川本店、三笠本社、札幌支店の3事業所がある。それぞれの事業所は50名未満である。9割が男性で、20代から60代まで幅広い世代が活躍している。
今回は、代表取締役社長の田端千裕さん、本店長兼総務部主幹の芝岡雅章さんからお話を伺った。

1か月に1回、半年に1回など入社年数に応じた頻度で面談の機会を作ったことで、問題の早期改善だけでなく、言いたいことを率直に言える信頼関係につながった。

まず、職場のメンタルヘルス対策の取組みについてお話を伺った。

健康経営に取り組んでいます 「社会全体が人材不足になっている中で、新たに人を採用することが難しくなっていることを実感しています。だからこそ、今いる職員になるべく健康で長く働いてもらいたい、という思いから、健康経営に取り組むようになりました。毎朝ラジオ体操をする習慣が50年以上続いていますので、もともと職員の健康保持・増進に取り組む素地はあったと思いますが、2021年から健康経営に積極的に取り組み始めました。」

「健康経営の取組みとして、たとえば、安全大会など職員が集まる場の中で健康に関する話をしたり、市の保健センターなどに講師派遣を依頼して話をしてもらったり、ヨガのインストラクターに来てもらったりしています。」

定期的に職員面談を実施しています 「また、全職員を対象に定期的に面談を実施しています。特に若手職員の面談は頻度を高めに設定しており、入社1年目は入社して半年間は1か月に1回、入社3年目までは少なくとも半年に1回は面談を実施しています。中堅職員は年1回実施しているほか、ポジションが変わったり環境に変化があった方は面談を行うようにしていたり、それ以外でも緊急性がある方がいたらその都度面談しています。定期的に面談することで何か問題を抱えていないか確認することもできますし、ストレスが溜まっているときは2時間くらい話す人もいますので、とにかく全部吐き出してもらっています。聞き切ることが大事だと考えていて、言ったあとはすっきりしてくれているように思います。」

「定期的な面談以外で面談が必要となる場合は、さりげなく周りに気づかれないように、面談以外の用事を作って現場にいくようにしています。そして、合間に呼び出して話をします。現場には個室などはありませんが、農業用地に行ってしまえば、重機の音などもしていて周りに声は全く聞こえません。」

取組みを進めてきたことで社内全体でメンタルヘルスの意識が高まっています 「こうした面談の取組みは3年前から始めたのですが、そうした取組みのおかげか、社内でメンタルヘルスの意識が高まっていることを感じています。各拠点に気の利く人がいますので、そうした方が、気になる様子の職員がいたら『悩んでいるみたい』とか『話を聞いてあげて』とか連絡してくれるので、早いタイミングで私(芝岡さん)の耳に入ってくるようになりました。私(芝岡さん)や総務部だけですべてをカバーすることはできませんので、理解者の方々を頼りにしています。」

中堅職員の声から実施したアンガーコントロール研修が好評で、指導側の課題意識が明確になった。

次に、働きやすい職場づくりのための取組みについてお話を伺った。

アンガーコントロール研修を実施しました 「ベテランの職人の中には、熱くなって言い方が厳しくなってしまう人もおり、若手への指導の仕方に対する課題も感じていますので、今年(2024年)の春にはアンガーコントロールに関する研修を実施しました。実施のきっかけは、ある中堅職員からの声でした。怒り方によっては若手が嫌気がさしてしまうことがあるので、り方について学びたい、育て方を知りたいと言ってきてくれました。それはいいことだと思い、それならば皆に聞いてもらって、理解を深めたいと考え、外部講師に依頼しました。」

「参加者は事前にアンケート項目に回答した上で、研修当日、一人ひとりにアンガーコントロールの診断結果を渡し、講義の中で解説しました。受講対象者は、現場代理人になれるレベル以上の者とし、30人ほどが参加しました。皆熱心に結果を読み込んでいましたし、楽しそうに受けていました。」

「指導スタイルは急には変わりません。ただ、あなたと同じ人はいないこと、みんなそれぞれに個性があって、いろいろな考え方があること、教え方も様々あるということに、まず気づいてもらうことが大事だと考えています。その上で、何事も継続が大事だと思っていますので、2~3年後にまたこの研修を実施して、効果が確認できるといいのではないかと考えています。」

ハラスメントの予防に取り組んでいます 「現場にはハラスメントに関するポスターを貼って、ハラスメントを禁止している会社であることをアピールしています。ハラスメント110番の担当には、私(芝岡さん)の他に総務部の担当者1名を記載しており、現場に近い拠点にいる者がすぐに動ける体制をとっています。」

「現場に3人以上いる場合は、当事者ではない1人が仲裁に入ってくれることが多いのですが、2人の現場の場合は、当事者しかいなくなってしまい、中立で見てくれる人がいないので、まめに様子を見に行くようにしています。そうして様子を見に行く人間がいると認識してもらうことも、ハラスメントの予防のために重要だと考えています。」

ドローンの資格取得支援や建設ディレクターの導入など、若手や女性の活躍を後押しすることが、中堅・ベテラン職員への刺激にもなっている。

最後に、職場定着のための取組みについてお話を伺った。

若手の声を踏まえて資格取得のための支援制度を充実しています 「若手の離職率は以前に比べて下がっていると感じています。その要因の1つに、若手の声を聞いて様々な制度を作っていることがあるのではないかと思います。たとえば、建築に関する資格の取得にはお金がかかりますので、会社が補助する仕組みを設けています。また、トラックが運転できると現場で有益なので中型免許が取りたいという声を受けて、会社の全額負担で中型免許を取得できる制度を設けています。」

「今年(2024年)は、会社負担でドローンの国家資格を取得できる支援制度を作りました。今4人が制度を利用して資格取得に取り組んでいるところです。我々これからの建設業界では、測量などへのドローンの活用ができ、飛ばせて当たり前の時代がくると思うので、若手職員から底上げをしていくことで、中堅にも良い意味で刺激になるプレッシャーがかかるのではないかと考えています。これまでは、ベテラン職員が若手にすべて教えるという形でしたが、ドローンに関しては若手の方が知っているということになれば、若手も仕事が楽しく感じられると思いますし、会社での居場所を作ることにもつながるのではないかと思います。そうしてお互いに助け合って、相乗効果でもっとよい仕事ができるようになっていってくれたらと考えています。」

「また、多様な働き方を支援する観点から、建設ディレクターの制度を立ち上げました。施工管理の仕事の半分は書類業務ですので、その業務を2つに分けて、現場代理人として現場で活躍する業務と、建設ディレクターとしてバックオフィスの中で活躍する業務を分けることで、家庭の事情などから、現場には立てないという人でも戦力として、活躍してもらうことができるようになりました。せっかく育てた人材が、現場に立てないということで会社を離れてしまうのはもったいないので、現場に入れない期間は後方支援部隊として活躍してもらうことで、将来の人手不足の対応にもなるのではないかと考えています。」

「このような仕組みをつくることで、会社が職員のことを大事に考えているということが伝わり、職場定着につながっているのではないかと思います。支援制度をこれだけ揃えているところはなかなかないと思いますし、この近辺ではどこにも負けていない自信があります。」

【取材協力】株式会社田端本堂カンパニー
(2024年11月掲載)